中小企業の担当者がBCPを一人で作ることのリスク

2024年4月から介護事業者向けのBCPの策定が義務化されます。BCP未策定の事業所には、最大3%の介護報酬の減算される見通しとなっており、未策定の事業所の担当者は残り少ない時間で苦慮しながら事業所のBCPを策定することと思います。

また製造業でも、取引先からBCP(もしくは事業継続力強化計画など)を策定するよう要望を受けている中小企業もあるかと思います。

このようなケースでは、総務担当者などが公的機関が発表している資料の記入例を丸写しする形で自社のBCPを形式上作成するケースも多いです。

しかし、このように担当者が一人でBCPを作ることには弊害が多くあると考えます。そこで、担当者一人でBCPを作ることのメリット・デメリットと専門家とチームを組んでBCPを作成することのメリット・デメリットを比較してみたいと思います。

1.BCPとは何か?その策定手順は?

1.BCPとは何か?

BCP(ビジネス継続計画)は、企業が突発的な状況や予期せぬリスクに備え、事業を順調に運営し続けるための戦略的な計画です。そのリスクとは、地震、水害、台風などの自然災害やシステムの障害などが挙げられます。

近年、地球温暖化の影響で、豪雨・台風・豪雪の頻度が高まっているとともに、今後30年以内に南海トラフ地震や東海地震の発生が予想されています。残念ながら、災害により多くの死傷者やインフラの崩壊が生じることは避けられません。

このようなリスクに対してヒト・モノ・カネ・情報の経営資源を守ることは、企業として、もはや必須であるといっても過言ではありません。

2.BCP策定の手順(例)

引用:docomo business watch ~BCP(事業継続計画)とは? はじめてでもわかる策定・構築の手順と対応方法~

①策定の目的設定・・・BCP策定の目的、基本方針を決める。

②重要な業務とリスクの選定・・・自社にとって最も重要な業務の優先順位を決める。また、その重要業務におけるリスクを想定する。

③リスクに優先順位をつける・・・リスクの発生頻度と影響を分析する。

④実現可能な具体策を決める・・・災害対策本部の役割、初期対応の手順、経営資源の復旧を行うための対策を決める

上記のステップで策定したBCPをPDCA(Plan→Do→See→Action)で定期的にブラッシュアップすることが重要となります。

2.中小企業担当者が一人でBCPを作成する際のメリット・デメリット

1.メリット

  • 担当者に権限が集中しており、柔軟かつスピーディーにBCPを策定できる。
  • 担当者が企業の内部情報を把握しているため、実務的に即したBCPが策定できる。

2.デメリット

  • ITシステムの復旧プロセスや法的規制など専門知識の不足
  • 特定の部門や業務に偏った視点になる可能性があり、全体リスクの見落としや、部門間の連携不足が発生すること
  • BCPの作成に必要な調査や分析が不十分となること
  • 個人の経験や認識に基づいて、主観的にリスクを評価してしまうこと

3.専門家を交えたチームでBCPを作成するメリット・デメリット

1.メリット

  • リスクに関する専門知識を織り込んだBCPが作成できること。
  • 専門家の持つネットワークを活かして、他のBCP専門家の知見も得られること。
  • 専門家と議論しながらBCPを検討することで、担当者一人では得られなかった客観的な視点、全社的な視点を得ることができ、潜在的なリスクや脆弱性が明確化すること
  • BCPを作成するにあたって必要な調査の一部を専門家に依頼できるため、担当者の労力を省くことができること

2.デメリット

  • コンサルティングに伴い費用が掛かること

4.まとめ

近年企業経営を行うにあたって様々なリスクに直面しており、BCPを策定することの重要性は高まりつつあります。しかし、担当者一人でBCPを策定することにより、専門知識の不足したり、全社的な視点が不足する可能性があります。

BCPの策定支援を行っているコンサルタントとチームを作り検討を進めることで、客観的かつ専門的な知識を織り込んだBCPを作成することができるとともに、担当者自身の省力化にもつながります。