居酒屋がカフェ化している

昼飲み市場が拡大しています。名古屋にいると、明るい時間から空いている老舗居酒屋があったり、老舗食堂でお惣菜とお酒を楽しむ方を見かけますが、最近は新しくオープンするお店も昼飲み営業するお店が増えてきたと感じています。

私は、昼飲み需要の拡大とともに、居酒屋が昼営業の営業時間と昼営業用の商品を提供することで、カフェと同じようなオペレーションになりつつあると考えています。

では、なぜこのように昼飲み市場規模が拡大したのか、また、昼営業飲食店のメニューの特徴に関する一考察、最後に、注目している昼飲み業態の一部をご紹介します。

1.昼飲み市場の拡大の背景

コロナ禍で昼に少人数で簡単な料理とお酒を楽しむ習慣が拡大したことが昼飲み需要拡大の背景にあります。

コロナ禍前でも昼からアルコールを飲む「ちょい飲み」は浸透しつつありましたが、コロナ禍の緊急事態宣言期間中は、飲食店でのアルコール提供の提供時間の制限が設けられ、昼飲み営業せざるを得ない状況となりました。

出典:名古屋情報通HP べに屋

多くの自治体で、飲食店のアルコールのラストオーダーが19時~20時頃までとなっており、夜営業飲食店が昼営業や料理のテイクアウトを始めました。この外部環境の変化が昼飲み文化定着のカギとなったと考えられます。

出典:NHK

私もコロナ禍に昼営業の居酒屋を一人で利用していました。昼間にちょっと散歩してから飲むビールは、本当においしくて気分がよくなります。また昼飲みだと、深酔いしてもゆっくりお酒を覚ます時間があるため二日酔いになることが少ないことや、ピーク時間が分散されてゆっくり滞在できることなどの良い点もあったように思います。

従来は「夜に大人数でこだわりの料理と一緒に」お酒を飲むものでしたが、コロナ禍を経て「昼に少人数で簡単な料理と一緒に」飲むことも楽しみの一つに追加されたのではないかと思います。これにより、カフェのような感覚で日中の飲食店でアルコールを喫飲する習慣が定着し、昼飲み需要の喚起につながったと考えられます。

2.昼飲みで提供される料理について

これまでの夜営業飲食店は、昼頃から仕込みを行い、18時~22時頃まで4時間に客単価・客数を高めることで生産性を高める努力をしていました。

しかし、コロナ禍の昼飲み需要に対応するために、営業時間の長時間化(10時ごろ~19時ごろ)が必要となったのですが、最も大きな課題は人件費のコントロールであったと推測されます。営業時間が長時間化することにより、人時売上高※が下がるので、1時間当たりの人件費を減らし、調整を行う必要があります。

※人時売上高・・・1日の売上÷営業時間÷人員数の指標で、飲食店のKPIとして広く普及しています。一般的には平均5,000円を目標にしますが、業態などにより大きく異なります。

人件費を減らすための取組、すなわちオペレーションの効率化を図るため、昼飲みメニューの開発を行いました。具体的な特徴として以下の点が挙げられます。

  • メニュー数を絞る
  • 仕込みがないもしくは仕込みが少ないメニューを提供する
  • 予約なしの飛び込み客向けのアラカルト

①メニュー数を絞る

メニュー数が増えることで、食材の在庫管理、調理オペレーションの負担が増加します。メニューのバリエーションは、顧客満足度を高める要因になりますが、飲食店側としてはリスクです。このようなリスクを軽減するため、メニュー数を絞る戦略をとりました。

②仕込みがないもしくは仕込みが少ないメニューを提供する

営業時間が日中となってしまったため、手の込んだ料理の仕込みをする時間が無くなりました。そのため、より簡素な料理や、すべて調理が終わっている加工食品などをメニューに加えました。

③予約なしの飛び込み客向けのアラカルト

事前予約のある大人数会食の機会がなくなったことにより、コース料理の提供が難しくなりました。そのため来店時に注文する料理を決めるアラカルトメニュー(一品料理)を充実させました。

上記の3つは、少人数でオペレーションを行うカフェの軽食メニューの特徴と共通しています。

3.注目している昼飲み業態

na

出典:na Instagram

名古屋今池駅から歩いて5分ほどのところにあるベーカリー兼立ち飲みビストロ。営業時間は10時~20時までと、昼営業がメインとなっています。

平日にもかかわらずランチタイムはほぼ行列ができるほどの人気店です。カウンター席からは厨房が見渡すことができ、パン作りの様子を伺うことができます。

料理は、どれも本格的かつ独創性があるにもかかわらず、手ごろな値段で提供されています。特にベーカリー併設ということもあり、パンの種類も多く、どれも驚くほどおいしいです!

https://www.instagram.com/na.nagoya/

お酒の美術館

出典:お酒の美術館HP

「お酒の美術館」は、京都市を拠点に全国約58店舗を展開する立ち飲みバーで、名古屋市内に4店舗出店しています。

栄駅地下にある栄森の地下街店は、午前11時オープンであり、明るい時間から貴重なウィスキーやバーボンなどの洋酒を低価格で楽しむことができます。

近年ジャパニーズウィスキーは世界的に高く評価されており、日本人のみならず、外国人客も多く来店する店舗もあります。

大衆スタンド神田屋

出典:大衆スタンド神田屋 X

大衆スタンド神田屋は、「天狗」などの飲食店ブランドを全国98店舗展開する飲食チェーンであるテンアライド株式会社が2021年に初出店しました。

神田屋は、「ちょっと呑みの気軽さ」を追求した、焼きとん、おでんなどジャンル問わず提供するネオ居酒屋業態で、2021年に初出店し、現在、全国に33店舗を運営しています。

客単価が約1,700円(IR資料参考)と低くても、セントラルチェーン方式を採用することでフード原価を抑え利益を確保することに成功しています。