シャンパンが飲めなくなる日が来るかもしれない

フランスのボルドー国立農業科学学術院などによると、21世紀末までにワイン生産地の約9割が気候変動によって、これまで通りの生産を続けることができなくなる恐れがあるとの分析結果をまとめました。これは、干ばつや熱波の影響を受けためであり、ワイン生産者は、これまでにない未曽有の困難に直面しています。(日本経済新聞2024年4月7日掲載

伝統的な名産地への打撃

現在のワイン栽培地域は、アメリカのカリフォルニア州、フランス南部、スペイン北部とイタリア、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンなどに位置しています。これらの地域では、温暖かつ乾燥しており、ブドウの成熟に適した環境となっています。

しかし、スペイン、イタリア、ギリシャ、南カリフォルニアなどの沿岸部や低地の伝統的な主要品種のワイン産地が気候変動による過度な干ばつやより頻繁な熱波の影響を受けています。

事実として近年、気候変動の影響でブドウを収穫する時期が早まっています。多くの産地で、20〜30年前に比べて2〜4週間ほど早まってきているとの現状があります。ワインが早熟することにより、収量が低下したり、味や品質が低下する可能性があります。

気温上昇が2℃を超えると、このような伝統的なワイン生産地域の90%が、過度の干ばつや熱波の頻発化のために、21世紀末までにワイン生産に適さなくなる可能性があるとの予想もあります。

新しい産地の出現

一方でアメリカ北部、ドイツ、イギリス、カナダなどは冷涼な気候により、これまでワインの主要品種の栽培には適しておらず、マイナーな産地として扱われていましたが、温暖化により主要品種でも完熟しやすい環境になりつつあります。伝統的な産地が消失する一方で、ワイン造りに適した産地は今後80%~200%増加するとの試算もあります。

ただし、凍ったブドウでワインを醸造する「アイスワイン」などの冷涼地で生産される伝統的なワインの生産量は減少してしまう可能性もあります。

シャンパンの生産量減と価格高騰

世界的に最も人気のあるワインと言えば「シャンパン」があります。シャンパンとは、フランスのシャンパーニュ地方で生産され主に「シャルドネ」という白ブドウ品種を使い、瓶内2次発酵させたスパークリングワインを指します。(その他細かい基準あり)ドンペリニヨンやモエシャンドン、ヴーヴクリコなどの人気のブランドシャンパンは世界中に輸出されています

このシャンパーニュ地方も、もともと冷涼な気候であるフランスの北部に位置しており、これまではその冷涼な気候がシャンパンのキリっとした酸を作り上げていましたが、気候変動の影響により今後生産量が減ってしまう可能性が高いです。

現在でもドンペリニヨンは、1本1万円以上するラインナップが多いのですが、供給量の減少により今後値段の高騰が予想されます。社交飲食店(キャバクラ・スナック)やナイトクラブなどで1本数十万円で販売されていることも多いのですが、今後は小売価格でもこのような金額で取引される可能性があります。