補助金で設備を入れる前に、最初の10社へどう売るか決めていますか

補助金を使って新しい機械を導入したい。これまで対応できなかった仕事を受注したい。作業時間を短縮し、新しい顧客を開拓したい。

こうした相談は珍しくありません。

ところが、話を詳しく聞いていくと、設備の価格や性能、補助率については具体的に決まっている一方で、誰に売るのかが曖昧なケースがあります。

「既存顧客に提案する」
「ホームページで告知する」
「営業を強化する」

これだけでは、販売計画とは言えません。

設備を入れれば、仕事が増えるわけではありません

新しい設備を導入すると、できる仕事は増えます。

しかし、できる仕事が増えることと、受注が増えることは別です。

顧客は、その設備が新しいかどうかには、あまり関心がありません。

顧客が知りたいのは、次のようなことです。

今までより納期が短くなるのか
価格が下がるのか
品質が安定するのか
他社では対応できない仕事を頼めるのか
今抱えている問題が解決するのか

設備の説明だけでは、営業にはなりません。

「この設備によって、顧客の何が変わるのか」まで言葉にする必要があります。

「市場はある」ではなく、会社名まで出して考える

事業計画では、「市場規模が拡大している」「需要が見込まれる」といった説明がよく使われます。

もちろん、市場の確認は必要です。

ただし、中小企業が実際に受注できるかどうかは、市場全体の大きさだけでは分かりません。

大切なのは、最初に営業する相手を具体的に挙げられるかです。

例えば、設備導入前に次のような一覧を作ります。

既存顧客のうち提案できそうな会社
過去に対応を断った案件
外注している仕事を内製化できそうな取引先
同じ課題を抱えていそうな周辺企業
業界団体や紹介先を通じて接点を持てる会社

少なくとも10社程度は、実名で挙げたいところです。

守秘義務のある事業計画書に会社名を書く必要はありませんが、社内では具体的に整理しておく必要があります。

「製造業を対象にする」では広すぎます。

どの業種の、どの工程で、どのような問題を抱えている会社なのかまで絞ることで、営業方法が見えてきます。

実際私が事業再構築補助金で支援した会社でも、市場として伸びている分野で新サービスを提供したものの1年目に売り上げを1円も上げられなかった例もあります。

市場が伸びていれば、必ず自社の売上が伸びるわけではなく、具体的な顧客をいかつ捕まえられるかが重要です。

既存顧客に聞くべきことは「買いますか」ではありません

設備導入前に、既存顧客へ聞き取りをすることも有効です。

ただし、

「新しい設備を入れたら利用しますか」

と聞いても、正確な答えは得られにくいものです。

相手は関係性を考えて、「使うかもしれない」「興味はある」と答える可能性があります。

確認したいのは、購入意思よりも、現在の不便です。

現在、その作業をどこへ依頼しているか
納期や品質に不満はあるか
断られている仕事はないか
少量対応で困っていないか
外注費や輸送費が負担になっていないか
どの条件なら発注先を変える可能性があるか

こうした質問から、設備が解決できる問題を探します。

「設備を買う理由」ではなく、「顧客が発注先を変える理由」を確認することが重要です。

導入前に試験販売できないか考える

設備を購入する前に、本当に売れるかを完全に確認することはできません。

それでも、できる範囲で試すことはできます。

例えば、メーカーや協力会社に試作を依頼し、見込み客に見せる方法があります。

一時的に外注して、同様のサービスを販売してみる方法もあります。

設備導入後に予定しているサービス内容を資料にまとめ、既存顧客へ説明し、反応を確認することもできます。

ここで受注が取れなくても、無駄ではありません。

価格が合わないのか。納期に魅力がないのか。そもそも需要がないのか。営業先が違うのか。

導入前に分かれば、設備の仕様や販売方法を見直せます。

設備を入れてから市場調査を始めるより、はるかに損失が小さくなります。

売上計画は「単価×件数」まで分解する

新規事業の計画で、「数年後に一定額の売上を目指す」とだけ決めても、実行にはつながりません。

売上は、単価と件数に分けます。

さらに、件数を次のように分解します。

何社へ営業するか
何社と商談するか
何社から見積依頼を得るか
何社が受注につながるか
1社当たり年に何回利用してもらうか

ここまで考えると、目標が現実的かどうかが分かります。

例えば、年間の受注目標を達成するために、毎月何件の商談が必要になるのか。

現在の営業人員で対応できるのか。

社長だけが営業を担当するのであれば、既存業務と両立できるのか。

数字を分解すると、設備の問題ではなく、営業体制の問題が見えてくることがあります。

補助金の採択を、事業の成功と考えない

補助金を使えば、設備投資の負担を抑えられます。

しかし、補助金によって減るのは、主に導入時の負担です。

導入後には、次のような負担が残ります。

設備の維持費

消耗品や電気代

設置スペース

操作を覚える時間

営業や見積作成の手間

受注が少ない期間の固定費

補助金が採択されたからといって、受注が保証されるわけではありません。

むしろ、採択後は設備を導入することが目的になりやすいため、注意が必要です。

本来の目的は、設備を所有することではなく、設備を使って利益を生むことです。