省力化設備を入れたのに、人が楽にならない理由

新しい機械を導入すれば、作業時間は短くなります。

ところが、作業時間が短くなったはずなのに、残業が減らない。納期も縮まらない。人員にも余裕が生まれない。

こうしたことは、設備の性能が悪いから起きるわけではありません。

多くの場合、機械を入れた工程だけが速くなり、仕事の詰まりが別の工程へ移ったためです。

一つの工程が速くなっても、全体は速くならない

製造現場には、受注、材料準備、加工、検査、梱包、出荷といった複数の工程があります。

例えば、加工工程に省力化設備を導入し、作業時間が半分になったとします。

加工能力は上がります。

しかし、その前の材料準備が追いつかなければ、機械は材料待ちになります。加工後の検査が追いつかなければ、仕掛品が検査場に積み上がります。

会社全体の生産量を決めるのは、最も速い工程ではありません。

最も処理能力の低い工程です。

そのため、一つの工程だけを改善しても、会社全体の売上や納期が変わらないことがあります。

問題は解決せず、場所が変わる

省力化設備の導入前には、ある作業に人手がかかっていたとします。

設備導入後、その作業は速くなります。

すると、以前は見えなかった問題が表面に出てきます。

加工は終わっているのに検査ができない。完成品は増えたのに梱包担当が足りない。生産能力は上がったのに営業が受注を取れない。出荷量が増えて配送手配が間に合わない。

設備投資によって問題が解決したように見えても、実際にはボトルネックが別の場所へ移っただけです。

これは失敗ではありません。

むしろ、次に改善すべき場所が見えるようになった状態です。

ただし、導入前にそこまで考えていないと、「想定した効果が出なかった」という評価になります。

「何時間減るか」だけでは足りない

設備投資の計画では、導入前後の作業時間を比較することがあります。

この作業が何分短縮される。年間で何時間削減できる。

もちろん必要な計算です。

ただ、削減した時間が、そのまま会社の利益になるわけではありません。

空いた人が別の仕事を担当できるのか。残業が実際に減るのか。増えた生産量を販売できるのか。後工程に処理能力があるのか。

ここまでつながって、初めて省力化の効果が経営数字に表れます。

作業時間が減っただけで、人員配置も生産量も変わらなければ、会計上の利益はほとんど変わらない場合があります。

導入前に見るべきは、機械の前後です

設備を検討するときは、機械そのものの能力だけでなく、その前後の工程を確認する必要があります。

例えば、加工設備であれば、次の点を見ます。

材料はどの頻度で供給できるか。段取り替えに何分かかるか。加工後の検査能力は十分か。不良が出た場合の手直しは誰が行うか。完成品を置くスペースはあるか。出荷量が増えても物流が対応できるか。

設備メーカーの資料には、機械単体の処理能力が記載されています。

しかし、実際の工場では、段取り、待ち時間、運搬、検査、不良対応が発生します。

カタログ上の能力と、会社全体で実現できる生産量は別物です。

人が減らない設備投資にも意味はある

省力化設備を導入しても、人員を減らせないことがあります。

だからといって、投資効果がなかったとは限りません。

採用が難しい仕事を機械に置き換えられた。作業者の負担や事故のリスクを減らせた。熟練者しかできなかった作業を標準化できた。休暇を取りやすくなった。

こうした効果は、単純な人件費削減だけでは測れません。

一方で、「人件費が減る」という前提で投資計画を立てているなら、本当に人員配置を変えられるのかを確認する必要があります。

作業時間が短縮されても、その人が設備の監視や材料供給に残るのであれば、人件費は減りません。

省力化と省人化は同じではありません。

投資後に確認する数字を決めておく

設備導入後は、機械の稼働時間だけを見ても十分ではありません。

確認したいのは、会社全体で何が変わったかです。

例えば、受注から出荷までの日数、工程間に滞留する仕掛品の量、残業時間、段取り回数、不良や手直しの件数、出荷件数などです。

機械の稼働率が高くても、仕掛品が増え、納期が変わっていなければ、全体最適にはなっていません。

逆に、機械の稼働率が低くても、必要な生産を短時間で終えられ、残業や納期が改善しているなら、導入効果は出ています。

機械を止めないことが目的ではありません。

会社全体の仕事を、以前より少ない負担で流すことが目的です。